周りは火の海だった。


強く強く燃え盛る、それはまるで地獄の業火。


■■士郎がただの士郎になったあの時にも似た風景が、今再現されている。


俺はその中で立ち尽くしていた。


…この光景は、夢は数日前にも見た。


俺の体はアーチャーになる前の己の姿。


英霊となる前の人生における衛宮士郎の姿。


そして、目の前には人が倒れていた。






彼女に生気はなく、いつもの太陽のような笑みもない。

傷一つないその姿は、まるで眠っているように穏やかで。

でも、俺は知っている。

彼女が、もう起き出すことはないことを。



目をつむった。

…思い出す。 彼女の日常、共に過ごしたこれまでの生活すべてを。

俺の姉代わりを自認し、そして俺もまたそれを認めていた人物。

細かい事は笑い飛ばし、こっちの都合なんかお構いなし。

それでもその存在は、衛宮士郎の日常の象徴だったのだ。



ゆっくりと目を開ける。

肌を舐めていく炎が熱いと、他人事のように思った。

しゃがみこんで頬についた煤を払ってやる。

そのついでに、投げ出されていた彼女の手を胸の前で祈るように組ませた。



そして、俺は別れを告げる。

己の住処であった生家と、姉であった人に。










場面は切り替わって城……昨日いたはずの場所だ。

夢だからだろうか、まるで地に足がついているようには思えなかった。








辺りには物音一つしない静寂の中。

俺は見つけてしまった。



まさか、と思っていた。

そんなはずない、と思いたかった。



見覚えのある服。

聖杯戦争から変わらぬ幼き体型……だが、胸の部分に大きな穴が開いている。

その光景に自分の気持ちが高ぶる。



肉親ともいえる彼女をこのような形にしてしまったことに対する怒り。

もし、自分がずっとここに居たら…そんな後悔。

そんな心情が入り混じった気持ち。



そして、深い憎悪。



かつてないものほどに燃え上がったそれらの感情は、俺に冷静さを失わせた。















考えてみれば、俺が大本の原因、きっかけであったのに。























そして、俺は剣を握り、戦う。

次々と襲い来る強圧な一撃を次々と避ける。

右の手には投影された剣――約束された勝利の剣

それは、強靭な一撃で敵の攻撃を弾き飛ばす。

それでも『敵』は笑っていた。

楽しそうに、嬉しそうに。…狂ったように――。

俺は深い怒りと悲しみを込めて、ただ我武者羅にその剣を振るう。

何故、何故、ナゼ――――!!!!

壊れた玩具のように繰り返す。

答えて欲しかった。 言い訳が、弁解が欲しかった。




彼女も、俺の『日常の象徴』であったから。




そして生じたのは一瞬の隙。

逃さず一気に接近した俺は……『敵』の胸に剣を突き立てた。





『敵』が最期の呟きをもらした時、俺の中で、何かが、音を立てて、壊れた。



赤き弓の戦


第11話 狂気




「……夢か。」



俺は気だるさを抱えた呟きをもらす。

ここ数日よく夢を見る。

そして、それがだんだんクリアになってきているのが自分でも解りだしてきた。

これはおそらくアーチャーとのラインが繋がった影響。

それは納得するところではある。



問題は、俺がその事を覚えていないことだ。





「悩んでいても仕方がないということか。」





そう自分を無理やり納得させる。

そして、俺は部屋から出る事にした。







台所にて、朝食の準備をしている。

どうでもいいがこの瞬間が一番充実していると感じるのは如何なものだろうか。

それでも手は止まらないのだが。



「おはようございます、シロウ。」

「ああ、おはよう、セ……どうした、その格好。」



朝一番に入ってきたセイバーは、物々しく鎧を纏った戦闘態勢だった。

何かあったのか、そんな事を考える。



「はあ……。シロウ、私たちの立場を少し考えてください。アーチャーと交代で屋根での監視をおこなっていたんです。」



ため息を吐きつつ教授された言葉に思い至る。

そういえば、私も弓兵であった頃は屋上に陣取り偵察をよく行っていたものだ。



「シロウ。貴方は鋭いのか、鈍感なのか解らない。」



セイバーはため息をつきながら鎧の装備を解く。

いつもの格好にもどり、テーブルに座る。



「それで、朝食は何ですか?」



セイバー、俺も君の事が時々解らなくなる。

凛々しい時と、食べている時とどっちが本当なんだい?






「ごちそうさまです。」



セイバーが箸を置く。

これで全員が朝食を終えた。

しかし、たくさんで食べる朝食はいい。

そんな事を考えていた時だった。

電話が鳴る。



「あ、シロウ。私が出るわ。」



そういってアーチャーが取りに行く。

俺は、一言、頼むと告げると朝食の片づけを開始した。

ちなみに、凛とイリヤは朝のワイドショーを見ながらボーっとしている。

手伝う気はナッシングのようだ。

まあ、かまわないのだが。

そんな事を考えて片付け始めて3分後、アーチャーが帰ってきた。



「藤村先生からだったわ。今日は忙しくてこれないって。」



そういえば、今日の食卓に虎は居なかったな。

道理で静かであったわけだ。



「あと、昨日学校休んだ理由聞いてたわよ。まあ、適当に誤魔化しておいたわ。今日休む理由と一緒に。」



俺はグッジョブと親指を上げる。

それを見て、少し呆れた顔をした後、アーチャーは笑った。

戦争の合間の少しの幕間。

こんな長閑さがあってもいいだろう。

そして俺は5分で片付けを終わらせた。

何かの引っかかりを覚えながら。







時計が、9時くらいを指したころだった。

再び電話が鳴る。

今度は俺が電話にでた。



「もしもし?」

何気なく取った受話器。

「せ…先輩…。助けて…下さい。」



そこから聞こえてきたのは、か細げな少女の声だった。



「っ、桜か!? 一体何があったんだ!?」

「先輩……学園が……。」



その一言で不意に思い出す。

学校―――結界かっ!



「すぐに行く!!」



俺は電話を切るとすぐに玄関に向かおうとした。

その時だった。



「一人で行くつもりじゃないでしょうね?」



不意にかけられる声。玄関の前には赤い服、そしてマントを纏ったアーチャー。

その視線は一人では行かせないと雄弁に語っていた。

俺は小さくため息をつく。

そして――



「行こう。」



短くアーチャーに一言告げた。

学園には、友人が、藤ねぇが、桜がいる。


だからかもしれない。


桜の声が、底知れない笑いを含んでいた事に、俺は気づかなかった。








学園までは全力で走り、ものの数分で到着した。

アーチャーと二人、校門の前に立つ。

一見はいつもと変わりない。

だが、禍々しい魔力がにじみ出ていた。

普通の魔術師なら絶対に入りたくない結界が発動している。

俺はアーチャーの方を見る。

アーチャーもこちらを見た。

お互い目と目を見て、頷く。

それが合図。

そして、俺たちは学園の中へと入った。



「屋上よ!!」



校門をくぐった所でアーチャーが叫ぶ。

そこには一人の英霊。

地上からでも分かる、鮮やかな藤色の髪を靡かせた女である。

そう、かつて対峙したライダーがいた。



「飛ぶぞっ!!」



俺は叫ぶ。

同時に足を強化。

そして飛んだ。一気に屋上へと向かうため。










「来ましたか……衛宮士郎。」

「ああ、久しぶりだな。ライダー。」



その間、一瞬たりとも気を抜いてはいない。

俺、アーチャー、ライダーは臨戦態勢のままだ。



「……結界、解いてくれないか?」

「……断ると言ったら?」

「力ずくでも!!」



そう言って俺は剣を投影しようとする。

その時だった。



「ライダー、先輩の言うとおりにしてあげて。」



不意にライダーの後ろ――屋上の入り口から声がする。

その声はひどく懐かしく…そしてこの場にひどく不似合いな声。



「分かりました。」



同時に、ライダーが結界の発動を消した。



「それにしても先輩はいつでも先輩なんですね。」



その声と共にライダーの後ろから現れる少女。



自分の目が信じられなかった。


その声も、姿も、笑顔も。


いつもと変わらない、彼女のものだったから。



「そ…ん……………な…。」



俺は声を失いそうになる。

それを見てその少女は嬉しそうに。そう、酷く嬉しそうに笑う。



「……さく…………ら…?」



消えそうなほどか細い声をあげるのがやっと。



「お久しぶりです、先輩と衛宮先生。いえ、アーチャーさん。」



それを聞いて一気に厳しくなるアーチャーの視線。



「気づいていたのね。」

「はい、貴女と会った日から。」



よどみなく答える桜。

もはやなにが何か分からない。

だが、俺の中では形に出来ない色々なものが渦巻いていた。



「…なんで?」

「うふふふ……先輩が悪いんですよ。私を放っておくんですから。」



桜は笑顔、まぎれもない笑顔だ。

だが…何かが違う。

そう、まるで狂ったように笑う。



その笑顔に、なぜか既知感を覚えた。



「だからですよ? 先輩。私……こんな風になってしまったんです…」



彼女が笑い、両手を広げる。



同時に、日差しの差し込む屋上が、雰囲気を変えた。



まとわりつくような、ねっとりとした殺気。

不意に下がる体感温度。

知っている、この感覚は何度も味わっている。

そう…



「本当に先輩のせいですからね。」



そう言って冗談を笑い飛ばすように笑う桜の背後に――





   あ  の  影  が  い  た  。




ぼやけるように桜の姿が変わる。

酷く赤い、まるで血のような緋色の目。 頬にはタトゥーのような模様。

そして、黒衣を纏ったその姿は……………





思い出す……。





右の手には投影された剣――約束された勝利の剣

俺は、強靭な一撃で敵の攻撃を弾き飛ばす。

それを見ても笑っていた。

……狂ったように、いつもと変わらぬ笑みで――。

俺は怒りと悲しみを込めてその剣を振るう。


そして生じたのは一瞬の隙。

逃さず一気に接近した俺は……『敵』の胸に剣を突き立てた。



剣は一気に胸を貫き、背後の岩に突き刺さる。



その瞬間、さらりと、頬から流れ落ちる髪。

そこから見えるのは――



憑き物が落ちたような桜の顔。



右手を俺の頬に当てる。

そして彼女は一言――



「先輩――会いたかったで…す…。」



いつもの、桜の笑顔。

台所で、弓道場で、土蔵で。

いつでも、どこでも、見ていた笑顔。


涙を浮かべていても、その笑みが壊れる事はない。

まるで、母親のような聖女のような、全てを包み込む笑顔。



目じりに溜まっていた涙が流れ落ちると同時に、俺の頬に当てられていた右手も落ちる。


その瞬間に俺の中で、何かが、音を立てて、



































壊れた。






































「うわあああああああっ!!!」



思わず絶叫を上げる。

心臓が全力疾走の後のように鐘を打ち、頭が混乱する。

足が震えてまるで立っていられない。

いや、足だけではない。

全身が震える。

思わず両腕をつかむ。



「ちょ!! シロウ!!」



アーチャーが叫ぶ。









「うふふふ……。先輩、私のものになれば楽になりますよ。」

「っ!!」



全てを見通したように、桜は微笑む。

構えるアーチャー。

それに応じるように構えるのはライダー。

そして……



「つっ!!」



アーチャーは左手で“アブソリュートガンド”を桜に向けて撃つ。



「ふふ…無駄です。」



しかし、微笑む桜の前に影が立ちふさがりそれを吸収した。

それを見て攻撃態勢に移るライダー。

だが…そこにすでにアーチャーは居なかった。

何故なら、シロウを抱えて一気に離脱していたからだ。



「逃げられましたね、サクラ。」

「ええ。でも、いいわ。それに先輩の家には今頃……。」

「はい、ゾウゲン達が。」



それを聞くと少し嫌な顔をする桜。

やはり、間桐の爺さんの事は嫌いなようだ。

そう言いながら桜は笑顔でアーチャーの逃げる方を見つめる。



「でも、最後には私のところに来る事になるんですよ、先輩。」



桜は、笑みを浮かべる。

見るものの心を凍てつかせる、酷く歪んだ微笑みを。

















一方の、衛宮家。



「何ですって!? シロウが!!」

「ええ、学校に。おそらく結界の件かと。」

「しまった…うっかりしていた。」



ここで凛はうっかり属性を発揮していた。



「どうしますか?マスター。」

「勿論、追うわよ!!」



そういって縁側に出た時だった。


カランカラン


作動する屋敷内の結界。



「「!!」」

「何!?」



同時にイリヤが飛び出してきた。



「マスター……。」

「ええ……イリヤ、貴方は道場へ。」

「え?」

「早く!!」



凛の勢いに押されてイリヤは渋々、道場に向かう。

それを見送ったセイバーは縁側に降り、身構えた。

そして……



「よお、嬢ちゃんも残っていたのか。」



降り立つのは槍の英霊。

その様子は相変わらず不遜という言葉が似合う。



「まあ、いいか。とりあえず、相手になってもらうぜ、セイバー!!」



同時に弾丸の如く飛び出すランサー。

そしてそれを迎撃するべく視界を消した剣、風王結界を握り締めるセイバー。

二度目となる、槍と剣が激突した。













「……無力ね。」



ポツリと呟いたイリヤ。

道場の床の間に腰掛ける。

外からは金属音。

おそらくセイバーが迎撃に入ったのだろう

彼女は、思わずため息をついた。



すでにバーサーカーとの絆だった霊呪はもうない。

そう、唯一といっていい信頼の存在であった彼はもう消えてしまったのだ。

痣のような霊呪の跡と、かすかな胸の痛みを残したまま。

仮に黒化していても、もうあのバーサーカーは帰ってこないだろう。

そうなると、自分はただ、少し魔術が使えるに過ぎない器。使えない道具。

本当に無力な存在だった。





「!!」



寒気、そして殺気。

思わず身震いをする。



「誰っ!?」



自分を鼓舞するように声を上げるイリヤ。

無論、返事を期待していたわけではない。

だが……



「…わしじゃよ。」



期せずして返事が返ってくる。

そのねっとりとした粘着質で…だが乾いたような矛盾を秘めた声は……



「間桐の翁…。」



呟くと同時に入り口から入ってきたのは、小さな体だった。



「覚えていてくれるとは嬉しいの…。」

「出来れば忘れていたかったわ。」

「ほっほっほっ、強がりを言いなさんな。手が震えておるぞ。」



それ聞いて、手をグッと握り締める。



「さて、今度こそ来てもらおうか。」

「ふん、レディをエスコートするのに気の効いた台詞はないのかしら。それじゃあ誰にでも、お断りされてよ?
 まあ貴方なら、どんなに気が効いていてもお断りだけど。」
「ふむ…素直に来る気は無いか。」



同時に、現れる黒い影。

それは臓硯のサーヴァントであるアサシン。

手に持つのは彼が愛用するナイフだ。



「手の一、二本は覚悟してもらおうかの。何、多少の体の破損があっても、どうにかなるじゃろうて。」



言い終わると同時に、、アサシンはナイフを構えた。

そして構えて…投擲体勢に入る。



(……私、死ぬの?)



彼女は、思わず目をつむる。


思い出すのは、冬の森。

雪が自らの血で染まる中、それでもバーサーカーと通じ合った。




でも、そのバーサーカーはもういない。


(……それも、いいかもしれない…)



彼女は疲れていた。

器として生まれ、道具として生かされていた。





だが、もう一人の『イリヤ』が囁く。





それでいいの? と。





アインツベルンの城からこの屋敷に来て一日。

たった一日だが、人のぬくもりを知るには十分な時間だった。







………ない……たくない…死にたくないっ!!!!!)







そしてアサシンの手からナイフが…投げられる。



「助けてっ!!」



その瞬間だった。

光ったのは、イリヤの体。



「何じゃと…!?」



突然の出来事に臓硯はおののく。


その輝きの中現れる影。

だが、勢いのついたナイフは止まらない。

同時に金属音が二つ。



「無粋よな。か弱き乙女をいたぶるとは。」



振り下ろされる長い刀。

イリヤは目を開ける。

そこには着物を着、長い髪を纏めた長身の男が凛然と立っていた。



「馬鹿な!! 貴様は……!!」

「ふむ。私にもよく分かっておらん。だが、召喚された事も事実。」



そう言って、男はイリヤのほうを向く。



「サーヴァント、アサシン。真名、佐々木小次郎。マスターを守るべく参上いたした。」



救いは、現れた。















響く金属音。

ランサーの一撃をセイバーは風王結界でいなす。

そして次はセイバーが打ち込んでいく。

それをランサーは槍で受け止めた。



激しい応酬は、止むことがない。



「くっ……ランサー、貴方は何故そのような状態で生きているんですかっ!?」



セイバーが力を込めながら問う。



「知るかよ、変なアサシンに心臓貫かれて、死んじまう前に変な影に飲み込まれてこうなっただけだ!!」



そう言ってランサーは槍でセイバーの風王結界を弾いた。



「だが、俺は思いっきり戦えれば文句はねえ!!」



槍を次々と繰り出すランサー。

それを体裁きで何とか交わすセイバー。

一進一退の攻防である。


(一気にケリをつけないと…学校の件もあるし……)



そう考えて、凛はセイバーに宝具の使用を許可しようとした――その時だった。



道場の方から飛び出してくる黒い影。



それは臓硯とアサシンだった。



「なっ!?」



驚く凛。

だが続いて出てくる人物にさらに驚愕する事になる。



「…っアサシン!?」



そう、あの剣士のアサシンが出てきたのだから。

アサシンいや真アサシンというべき存在は臓硯と共に早々に離脱していく。



だが、アサシンはそれを深追いしようとしなかった。



「アサシン、セイバーの援護!!」



同時にイリヤの叫び声が聞こえたからだ。

それに反応して、彼はランサーに向かう。

ランサーは戸惑いながらも、彼を迎撃しはじめた。



アサシンはその長大な刀――物干し竿を振るう。

その姿は、優美といっても過言ではない。

それを受け止めるランサー。

だが……



「隙だらけです、ランサー!!」



セイバーはランサーの背中を袈裟に切り下げた。



「つっ!!」



ランサーはアサシンの刀を払いのけると塀の上に後退する。

背中からは血が流れていた。

傷は、浅くはないのだ。



「つっ……。仕方ねえな。退くか。」



同時にランサーは撤退する。



「逃がしません!!」



セイバーが追撃しようとする。

その時だった。



「待ちなさい!」



叫びと同時に庭に降り立ったのは、アーチャー。



「ちょ……アーチャー、学校は…!!」



驚き問いただそうとした、凛だったが背負われた士郎に気がついた。



「事情は後、幸いやられた訳じゃない。とりあえず士郎を布団に寝かせてからね。」



そう言うと、アーチャーは部屋に士郎を運んでいった。

それを心配そうに見送る凛。

だが、イリヤに目線に気がついて、咳払いをする。



「いいわ、とりあえずアーチャーが帰ってきたら事情を整理しましょう。」



凛は、そう纏める。

それにセイバーも頷いた。













「何から話しましょうか。」



居間に集まったのは、セイバー、アーチャー、イリヤ、凛の4人。

アサシンは偵察すると言って外へ出て行った。



「もう、何が何だか分からないけど…とりあえず、アーチャーからでどう?」



ここで仕切るのは凛だ。



「ええ。まず、ライダーのマスターだけど…桜だったわ。そして、あの黒い影を操っているのもね。」

「!!」



それを聞いて信じられないという表情を浮かべたのもやはり彼女で。

だが一方で、納得をしてしまっているようだ。

『遠坂凛』としてではなく、『冬木の管理者』として。



「それで、桜が…あの状態を黒化って言うのかは微妙だけど、影を呼び出したあたりで、シロウが苦しみだしてね。まあ、少し気絶してもらったってワケ。」



そういう、アーチャーは憮然とした表情であった。

何か思い当たる節があるのかもしれない。



「……」

「次、私が話していいかしら、リン?」

「あっ、え?…ああ、お願い。」



少し動揺しているのか話を聞いてないような素振りを見せる凛。

それにため息をついてイリヤが話し始めた。



「道場で臓硯に襲われた時、何故か召喚の術法が作動して…アサシンが現れたの。」

「何、その出鱈目?サーヴァントって7体じゃないの?」

「普通はね。ただ推測は出来る。」



そういうとイリヤは一度、息をついて周りを見回す。

そして続きをしゃべりだした。



「まず、前提として、今回のアサシンは非常に不安定だった。ルール破りのサーヴァントのサーヴァントとして呼ばれた事。さらにそのサーヴァントを媒体として次のサーヴァントが召喚された事。」

「ちょ…どういうこと、それ?」

「臓硯のアサシン、まあ真アサシンとでも呼ぶけど、アレはアサシンのお腹から出てきたらしいわ。」

「……そんなことがあるの?」

「アサシン自身が言うからには、間違いないんじゃない?」



それを聞いて思わず腹を押さえるセイバー。

やはり自分としても気持ちのいい話ではなかったのだろう。



「それと、後一つ。もしかしたら器がもう一つあることが問題かもしれない。」

「……イリヤの他にいるってこと?」

「ええ。それも見当がついてるわ。」



そういってイリヤはお茶をすする。

しかし同時に苦い顔をした。

理由は普段の士郎ではなく今日はアーチャーが入れたから。

そして、アーチャーのお茶は、彼女の舌に合わなかったようだ。

イリヤは湯飲みを置くと――



「さっきの話に出ていた、サクラって子よ。」



ハッキリと告げた。

同時にガチャンという音。



「マスター?」



凛が青い顔で座っていた。

何か嫌な事を聞いたかのような顔。

その様子に黙り込む一同。

数分の沈黙が流れる。



「……ともかくこれからを考えましょう。」



そう言って話を続けようとするのはアーチャー。

だが、彼女の声も幾分震えていた。



「ええ…。」



凛も少し落ち着きを取り戻したようだ。



「ともかく、この事態で戦いを続けるわけにもいかないわ。あんまり頼りたくないけど……あの似非神父にでも相談した方が良さそうね。」



そう提言する凛。

そして一同を見回す。



「まあ、このままココにいるより良いかもね。」



アーチャーは賛成の意を示す。



「私もマスターの意に従います。」



セイバーも頷いた。



「まあ、私はどっちでも良いけど…ただ士郎が起きるのを待った方が良いわ。この際、間桐の爺と孫は繋がってると考えた方がいい。そう考えると戦力は多い方が良いと思うし。……置いてもいけないし…ね。」



イリヤがそのような意見を言う。

それに賛意を示す3人。



「じゃあ、士郎が起きて、落ち着いたら出発しましょう、冬木教会へ。」



あとがき

というわけで11話をお送りしました。



オリジナルかアサシンか…


迷った末にアサシンです。

何となく、イリヤとアサシンって言う組み合わせあまり見ないんで、組ませてみました。


しかし、すでにオリジナルルートまっしぐらです。

どうにもならんよって感じですが、ご意見お待ちしております。

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