ここはどこなんだ?

俺は誰なんだ?

そして、俺は目を開く。



「よかった…。生きててくれたんだ。」



それは見覚えがある笑顔。

磨耗した記憶を引きずり出し、そして結論する。

そう、それは俺の師匠であり

俺の父である男――衛宮切嗣

ならここはどこだ?

思い出す――

そして、俺は周りを見回す。

そこは一面の焼け野原。

そして空には、黒い穴。

それで、思い当たる。

どうやら世界は俺を苦しみからは解放してくれないらしい。



結論――俺は過去に来たらしい。




赤き弓の戦

序章 逆行




目を覚ますと見知らぬ天井。

いや、知っている天井ではある。

そこは切嗣の子供になると決めた病院だった。



「さて…。」



俺は一息つく。

そしてここまでの経緯を思い出した。





「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから頑張っていくから」



そう言って俺は笑顔を浮かべた。

少女の涙ながらの笑顔を見ながら、俺はこの世界の俺は大丈夫だと確信した。

そして薄れいく意識。

どうやら俺も本格的に消えるようだと悟った。

それはかつて幾度も経験したこと。

そして俺は浮遊感を得た。

この後、いつもなら次の召喚に飛ぶ。

その例の如く、どうやら次の召喚に飛ぶようだ。

やはり自分の過去を断ち切ったところで平行世界の話。

要するに俺はこのまま英霊として戦い続ける。

それが俺の宿命。

そう悟った時だった。

かつてない強烈な力にひきつけられて俺は大地に立った。

そして、俺は焼け野原の上に居た。



それはあまりにとっぴな光景だった。

磨耗した記憶の中で一度経験したような地獄絵図。

ふと自分の体を見る。

明らかに縮んだ手足。

さらに吸い取られる力。

吸い取られる?

そこで気づく。

自分の命が吸い取られている事に。



「……このままでは不味い。」



本能的にそう悟った。

だから俺は防御することにした。

何故か閉じていた魔術回路を無理やりこじ開け、

今までとは比べ物にならないくらい低い自分の魔術力の全てを防御に費やす。

だが、あまりに強い力を使ったため、俺は力尽きてしまった。




さて、ここで考えなければならないのはこの後のこと。

おそらくすでにこの世界は俺の過去に程近いものの別の過去となる平行世界。

要は違う世界に居る自分。

しかも反則的に自分の未来を知っている自分。

だから俺はこのままどうするべきなのか?

思考の世界に入ろうとした時、一人の男が俺のベットの前に立つ。

それは親父……。

その顔はひどく心配しながらも、俺が無事である事を知ると心底安心した笑顔を向けてくる。

その顔だけで俺は決めてしまった。

もう一度、この人の息子として生きてみよう、と。





そして物語は10年後へと進む。


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